ここではない、どこか遠いところ

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最近読んだ10冊(2018.12)

最近読んだ10冊の感想を飛ばさず書いてみる企画、第二弾です。第一弾はこちら↓
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※並びは最後に読んだものが先頭です。

『命売ります』三島由紀夫

以下に書く『美しい星』で三島由紀夫を久しぶりに読んで、もう少し違うのも読みたいな、と思ったら近所の本屋でこれを売っていたので。どうやらちょうど今、舞台がやっているみたいです。あと、ドラマ化もされていたようです。

雑誌『プレイボーイ』に連載されたエンタメ小説ということで、ゴルゴか007のような(どちらも読んだり観たことがないので恐縮ですが)ハードボイルドでセクシーな展開がテンポよく進みます。ははぁ、同じ作家でも純文学と大衆文学の差というのはこういうもんかな、と、なんとなくしっくりくる。結末が「世にも奇妙な物語」的な投げやりどん底感があるのが、少し純文学っぽいのですが、全体的なメッセージ性は薄め。面白いといえば面白いけれど、実がないといえば実がない。

自分が、多少読みづらくても純文学を好むのは「ずっしりしたメッセージが欲しい」という感覚で本を読むからなんだなぁと、あらためて感じた一冊でした。余談ですがこれを読んだ後に三島由紀夫の自決の詳細をウィキペディアで調べたら、その温度差にキーンときてしまいました。(★★★☆☆)

『村上さんのところ』村上春樹

期間限定でオープンした、万人の質問に村上春樹本人が答えるという特設サイト。そのやり取りから特に面白いものを抜粋した本です。とても分厚い。いろんな質問があって、痛快な回答もあればためになる回答もあり。歳を重ね経験豊富な作家として、自信をもちながらも高飛車にならない姿勢に好感がもてます。

ちなみに当時、私も一通質問を送ってみました。何を送ったかはまったく覚えてないけれど……返事はいただけませんでした。残念。

私も時々人生や今後について悩む時があるのですが、実は相談できる人ってあまりいないんですよね。家族だと客観的な意見をくれないし、友人に重い話はしたくない。といって知恵袋に書いて有効な回答が得られると思わない。そんな「相談したい難民」ドバーッと集まったのかな、と。(★★★★☆)

「村上春樹は気に入らない」という人もたくさんいます。多様性は世界の持つ美点のひとつです。みんなが猫好きで、みんなが僕の小説を読んでいるような世界は、きっとそれなりに息苦しいと思いますよ。
ー 97ページ


『美しい星』三島由紀夫

2年ぐらい前に買って半分ほど(金沢に行って男に会うところまで)読んで、その後なんとなく読む気が失せて寝かせていました。引き込まれるような感覚は最初なかったので、中断してしまったのですが……後半のほうが面白かったかな。

宇宙人、しかも別々の星からやってきた4人が家族になっているという、破天荒な設定。なぜこんな?というのは、解説を読むと「なるほどなぁ」と納得しました(三島由紀夫の本来の意図かはわかりませんが)。

後半、宇宙人対宇宙人の白熱した討論は面白いけれど、なにせ長くて小難しいので、途中で集中力切れてしまったり。飯能という行ったことのない郊外の街の、全身から漂う空虚さがこの物語の強固なベースになっている気がします。そして結末がちょっとうまく行きすぎ感、今ひとつ(あえてかもしれない)。(★★★☆☆3.5)

『星の王子さま』サン・テグジュペリ

装丁が新しくなって以降本屋さんでよく見るようになり、何年かぶりに買って読みました。感動しすぎてこんなレビュー書いてます。とにかく名作です。(★★★★★)

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『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』河合隼雄・村上春樹

この二人は相性がいいらしく、『約束された場所で』と同じく興味深い対談です。人間とは、人生について、深いところで考えたい人はぜひ読んでみてください。(★★★★☆)

『世界を変えた10冊の本』池上彰

池上さんの本を読むのは初めてです。最初は、テレビの喋りそのままの文章が「ちょっと軽いかな」と気になったけれど、その軽さもこの本らしいのかな。

私は恥ずかしながら日本の政治にも国際情勢にも詳しくなくて、もっと知らなきゃ!と常々思うのですが、根本的なところで「なんでこの人たち争ってんの?」という疑問が(恥ずかしくて)意外と人に聞けなかったりします。それらは主に宗教から始まる対立なのですが、ベースとなる宗教の違いを知るための入門書として、非常にわかりやすい。続いて、経済についての本も紹介されています。

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教。それぞれが基本的に同じ宗教(世界)をベースにしているが、お互いに別の宗教だと主張している……その差違を、もう一度読み返して骨肉に染み込ませて、自らの言葉で人に説明できる程度にはなりたいなぁと思いました。(★★★★☆)

『夫のちんぽが入らない』こだま

これは完全にタイトルと帯に釣られ買い。出だしの一人暮らしから同棲に進展するあたり(舞台は仙台とかかな?)はわりとよかったのですが、その先が想像していた内容とまったく違いました。

とにかく「なぜその異常をスルーする!?」の一言。問題の根本を直視できないまま(本人的には努力されていると思いますが)どんどん負のオーラをまとっていくストーリー。読後感はかなりイマイチ……。

そういう問題(「入らない」)を抱えていることが悪いんではなく、明らかにそのせいで不幸になってんじゃん、他にやりよう考えようよ……という状況が、せっかちな私には耐えられませんでした。(★★☆☆☆)

『江戸川乱歩名作選』江戸川乱歩

『江戸川乱歩傑作選』に続いて。といってももう10年ぶりくらいの乱歩。

小気味好い語りはもちろんのこと、この人も遠藤周作と同じく「情景を描く人」だなぁと思いました。それに対して、三島由紀夫や村上春樹は「心理を書く人」と、あくまで個人的には思います。もちろんどちらも高い水準での話をなので、じゃあ三島に情景が描けてないのか、という話ではないのですが。安部公房も情景の人かなぁ。

江戸川乱歩の場合、昼と夜の描きわけがものすごく上手い。同じ昼でも『押絵と旅する男』の薄暗い昼と、『白昼夢』の真っ白に飛びそうな昼。同じ夜でも『目羅博士』の星も見えないであろう濁った都会の夜と、『踊る一寸法師』の妖艶な暗闇にテントの灯りが際立つ夜。

読み終わってからも、パッと絵が浮かぶ。心理そのものを言葉で書くのではなく、情景の中に心理を仕込む人。そんな作家に私は憧れがあります。展覧会を見た後のような、色鮮やかな陶酔が得られるので。

対して心理を書く人は、音楽的ですよね。それはそれで尊敬しているし、好きだし、語彙や例えの巧さは素晴らしいなぁと、読めば読むほど感動するのですが。いやはや、プロってすごいな(誰)。(★★★★★)


『日本の思想』丸山真男

読んだ、といっていいのか怪しいくらい飛ばしました。正直に言って、最初の章が難しくて理解できません!どうすれば、これを読めるようになるのかな〜と思いつつ、別に仕事や勉強で読んでるわけじゃないし、と飛ばしてしまった。

最後の「『である』ことと『する』こと」は読みやすく、タコツボとササラの話あたりは理解できました。基本知識がなくて出てくる単語が理解できないと、文章って読めないもんだなぁと。(星はつけません)


『約束された場所で underground 2』村上春樹

以下にレビューを書いた『アンダーグラウンド』に続き、オウム真理教の地下鉄サリン事件について、村上春樹が書いたインタビュー本。こちらは加害者側つまりオウム真理教の信者(元信者含む)へのインタビューと、河合隼雄との対談です。

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2ヶ月以上前に読んでけっこう忘れてしまったのですが(早い)、これを読むとますます、オウム信者が特別な人……品のない言い方をすれば頭のネジが外れた人、ではないのかも。と感じます。

『村上さんのところ』にも書いてありましたが、サリン事件を起こした信者の世代に共通するのが「ノストラダムスの予言」を本気で信じ、それゆえ終末観を抱きながら生きてきた人々。あの「1999年」から20年も経とうとしている今では、「ノストラダムスなんて本当に信じてたの?」と誰もが思うでしょうし、私もそう思う。けれど、もう忘れてしまったかもしれないけど、人々は馬鹿にしながらもなぜか疑い切れずにいたのは事実です。

地下鉄サリン事件が起きたのは1995年。予言の4年前。馬鹿馬鹿しい話のようで、無関係ではないのかもしれません。(★★★★★)

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