ここではない、どこか遠いところ

旅行記、写真、読書、日々考えること

最近読んだ10冊

本のレビューって「読んで面白かったからお勧めしたい」という動機で書かれる場合が多いけれど、「じゃあ逆にボツにした本ってなんだろう?どんな本を読んだうえでのお勧めなの?」と知りたいときもある気がします。だから、良いも悪いも関係なしに「とにかく最近読んだ10冊の感想を書く!」っていうのを、やってみようと思いました。読んだ直後の一番、記憶が新鮮なときに。

というわけで、いちばん最近読んだ順に10冊、メモ書き程度に感想を書いていきます。書きなぐりに近いですがご容赦ください。

一応★5段階で評価もしてみましたが、★1は基本的につけないので、実質★2〜5の4段階評価になってます。(★3はけっこう振れ幅が広くなってしまうのが悩み。)


(驚異の村上春樹率。あと小説が多い。)

『ヨーロッパ退屈日記』伊丹十三

何かで誰かが(完全に忘れた)「エッセイの元祖。最高」というような手放しのお勧め文句で紹介していて、すごく気になって買いました。私は映画に疎いので、伊丹十三さんの監督した映画も出演した映画も観たことがないし、なんなら顔もわかりません。唯一知っているのは、Wikipedia情報ですが、不思議な亡くなり方をした…ということ。

想定もおしゃれで(ご本人のデザインらしい)けっこう期待して読みました。ヨーロッパの文化やファッション、日本との比較、あとご自身の映画オーディションの話について、英語の習得について、などが書かれています。

しかし、率直に言うとあまりその良さがわからなかった。当時は前衛的な内容だったのかもしれませんが、今となっては目新しいことはないし、それよりも全体を通して感じられる著者の潔癖で・完璧主義で・口うるさくて・コンプレックス持ちすぎに思える性格が、ちょっとう〜〜ん。ってなってしまい、あまり楽しくは読めませんでした。著者をもっと知っていればまた違って読めるのかもしれません。(★★★☆☆)

『使いみちのない風景』村上春樹

これまで存在を知らなかった本ですが、この手の「写真+文章」を組み合わせたエモーショナルな本は好きなジャンルです。全体は3つの章に分かれていますが、タイトルにもなっている『使いみちのない風景』が半分以上を占めます。

この『使いみちのない風景』という文章、とてもいいなと思いました。著者は「旅が趣味」と紹介されることがあるけれど実はそうではなく、旅をしているというより、土地を移り住んでいるのだ。…という話から始まります。

私が村上春樹氏を好んで読む理由は、理屈っぽくて(それが嫌な人も多いのだと思いますが)、理論的に感情を説明しようとするところかもしれません。自分では、感情を文章に変換する能力に乏しく、語彙力も足りないため、モヤモヤっと思うことをこのように鮮やかに説明できません。だから彼の文章を読むと「確かに!」「そうだったのか」と開眼する瞬間があります。そう感じる人にはきっと村上春樹はハマるし、そうでない人には「何をまわりくどく言ってるんだ」となるんでしょうね。

一番最後の猫の話も好き。猫を何十匹も飼ってきたなんて、あまり知らない人多いんじゃないでしょうか?私は知りませんでした。この本は別途レビューを書きたいです。(★★★★★)

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹

タイトルが長すぎて(?)なんとなく敬遠していた一冊。名古屋という設定も個人的にややネガティブポイント…私は名古屋の土地柄があまり好きになれないんです。どちらかというと地元なんですけどね。まぁそれは置いといて。

この小説は彼の他の作品より評価が高くないようですが、私は好きな方に入ります。『1Q84』や『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のような大げさな時空間のトリップがなく、ほぼ完全に現実世界だけで完結したストーリーなので、精神的に落ち着いて読めます。村上春樹あるあるの「なぜかモテてしまう塩系主人公(注:洋食しか食べない)」には「またかよ」とツッコみたくなるものの、学生特有の孤独感などは多くの人が共感しやすいのではと思います。あと、グループ内の多崎つくる以外の4人…いや、男子2人が魅力的です。彼らの俗っぽい設定や描写、名古屋という特殊で閉鎖的な地域柄もよく書けているなと思いました。

ちなみに、相手役の女性はちょっと美人すぎますね(顔は見えないけど)。たぶん長澤まさみレベルの女性です。その非現実さを作者はわかって書いてるんでしょうか?『スラムダンク』の井上雄彦氏も女性を描くのがすごく下手だと思うのですが、何かしら通ずるイメージ不足というか、「いやいやそんな女いないって」と声を大にして言いたい。あだち充はまた別で「こういう子が理想的でしょ!」ってわかって描いてる感じ。(★★★★☆)

↑実は『スラムダンク』、一番好きな漫画です。新装版欲しい。

『君の膵臓をたべたい』住野よる

普段はこのように、恋愛オンリーで10代の子に爆発的にヒットした的な小説はまず読みません。「たぶん読んでも予想以上のものはないだろうからな〜」と思ってしまうのです。昔はセカチューとかも読みましたが、今はさすがに…。ただ、同い年の男の友人が「すごく良かったよ」と言っていたこともあって(彼はけっこうかわいい系の趣味なんだけど)、読んでみました。

読んでみた感想は、やはり予想以上ではなかったかな…と。でも、ケータイ小説みたく文章が下手すぎて歯がゆいとかでは全くなくて、きちんとしていて読みやすかったし、面白かったです(上から目線ですみません…)。セカチュー的なわかりやすいストーリーですが、主人公の2人に魅力があったので読んでいて飽きませんでした。一気に読めます。最終的にはあえて予想外の展開に持っていこうとした感じ、ちょっと無理があったかな?でも、めっちゃ泣きました(笑)その点で星ひとつ追加します。(★★★★☆)

『ラオスにいったい何があるというんですか?』村上春樹

安定のエッセイです。ところどころ写真が入っているスタイルは珍しく、それによってイメージがより膨らむので良かった。奥さんが撮影した写真もありました。奥さんの存在は普段あまり話に出てこないので「仲がいいんだなぁ」と勝手に微笑ましい気持ちになりました(そういう裏話好きなんです)。

上述の『多崎つくる』でも出てくるフィンランドの話が印象的でした。小説家がすごく多い国なんですね。やっぱり夜が長いからかな…(北欧ってなんでもそのせいにされそう)。ギリシャの話もいいです。ギリシャは行ったことないけれど、真っ白い街とか単純に美しくて憧れます。『遠い太鼓』を読みたくなりました。冒頭のボストンの話はあまり共感できないかな。色んな国を訪れての紀行文集ですが、一つずつが短くてあまり深く掘り下げていないため、若干「アソート」感が強くて物足りなさはあるかもしれません。

実は上司に「この本買ってみたんだけど、やっぱり村上春樹って面白くなくない?どこが面白いの?」と言われたのがきっかけで読みました。もしかしてこの本は特につまらないのか、それともただ肌に合わないのか、を判断するべく。結果は…私の判断では、後者だったようです。まあ誰しも合う合わないはありますよね。私は川端康成や宮沢賢治に挫折ばかりです。食べ物と一緒でそのうち好きになるかもしれません。

とりあえず、村上春樹のエッセイをまず一冊読むのなら、この本よりも『遠い太鼓』がいいと思います。もっと彼の心境などストーリーとして読めるので。以下の記事もぜひ。(★★★★☆)

www.anyplacebut.tokyo


『木洩れ日に泳ぐ魚』恩田陸

別れを決めた男女が一晩を過ごすミステリー、的な裏表紙の説明書きにまんまとのせられて手にとったものの、これは、正直、近年稀に見る駄作…ハッキリ言ってとてもつまらなかったです。詳細を言うとネタバレになるので避けますが、ずさんな設定や適当な伏線の回収、何もかもが「素人じゃないんだからさ」というレベルです。会話のテンポはうまいし、グイグイ読ませる力はあるんですけどね。恩田陸さんは、けっこういい作家さんですよね?『夜のピクニック』しか読んだことないし、内容も覚えてないのだけど。なんでこれを出したのか。残念…。(★★☆☆☆)

『薄情』絲山秋子

これも帯や裏表紙で判断して買いました。作家さんについては全く知りませんでした(平積みにしてあるものをざっと見て、気になったらタイトルと帯と裏表紙の説明で判断します。立ち読みは落ち着かないので、買って読みたい派)。

なかなか繊細な感情や出来事を書いた小説です。群馬の田舎の話。夢も目標もない主人公の男が、これからどうする?と漠然と不安を抱えながら、なんとなく小さなコミュニティに出入りするようになる…。

私は田舎の人間関係ってやつが面倒で好きになれないせいか、この本の主人公には感情移入できませんでした。「なんとなく居心地のいい不特定少数が集まるコミュニティ」的なものも、あまり得意じゃないし。じゃあ、どういう人がこの本を読むと楽しめるか!?というと、なかなか難しいですね。誰に受けるのかなぁ。つまらなくはないですが、感動でもないしなぁ。「地元」というやや生温い存在にちょっと興味があれば、読んでみるといいかも。そういう意味で、けっこうニッチなところを突いた地味な小説です。

「帰ってきたらね、犬のかたちをした絶望がいた」
―p.96

という台詞が、個人的にすごく気に入りました。(★★★☆☆)

『泣き虫チエ子さん 愛情編』益田ミリ

こちらは以前レビューを書きました。(★★★★☆)
www.anyplacebut.tokyo


『白い人・黄色い人』遠藤周作

同じ作者の『沈黙』で感動したので、続いて読んだのがこれ。『白い人』はナチス・ドイツ占領下で国を裏切ってナチスにつくフランス人の話で、『黄色い人』は戦時中に不貞行為を行なってしまった日本の神父と日本人の話。遠藤周作の初期の作品です。

『沈黙』の成熟した読みやすさには程遠く、とにかく肉体的にも精神的にもグロすぎて無理ーって感じですが、目を覆うほどではないので読めます。ハッピーな展開は微塵もないのでダークサイドに堕ちる覚悟で読むといいと思います(笑)。グロいなりにもただグロいだけのスプラッタではなく、人間の苦悩がじわじわじわじわと滲み出ていて興味深く読めます。

遠藤周作の不思議なところは、グロいことを書いてもなんだか気持ち悪くなくて清々しさが残っているところですね。『白い人』は芥川賞受賞作です。(★★★☆☆)

www.anyplacebut.tokyo


『アンダーグラウンド』村上春樹

オウム真理教の死刑執行を受けて個人的に思うところがあり、その後死刑についての本を読み、それから地下鉄サリン事件やオウムについてちゃんと知りたいと思って読んだのがこの一冊。とても分厚い本に、地下鉄サリン事件被害者のインタビューが大量におさめられています。レビューを書きたいと思いつつ、デリケートな内容なのでなかなか筆が重く…。(後日追記。レビューを書きました。以下リンク記事)

地下鉄サリン事件について以前はほとんど何も知りませんでしたが、いかに異様な出来事だったのか、被害者目線からあらゆる側面で感じました。ここに書かれているような事実は(みんなが口を揃えて述べていることでさえ)あまりメディアに報道されなかったのでしょう。それゆえこの本の果たす役割は本来とても大きいはずですが、25年経った今でもその声が届いたのかは正直怪しいなと思ってしまいます。

メディアの構造に対する不信感、正しい情報を勝ち取ることへの切迫感めいたものを、これをきっかけに自分は持ち始めました。ただ、そういう思考回路が行き過ぎて極端な方向に走るのではなく、分別ある人間として、実のある知識と中立的な判断を得ていきたいものです。(★★★★☆)

www.anyplacebut.tokyo

挫折中:『ホーキング、宇宙を語る』スティーブン・W・ホーキング

途中から難しすぎて挫折中です……。


結果としてかなり村上春樹ファンみたいになってしまいましたが、まぁそうなのかもしれません。あまり冷静に考えたことはなかったけど、星をつけてみると自分の趣味嗜好が客観的に見えてきます。

こちらもぜひ

www.anyplacebut.tokyo